新しい視点で豊かな体験 練馬区立美術館コレクション 若林奮展と寺田真由美展〈美術評〉高山羽根子

2026-08-31     HaiPress

美術館のフロアの右と左で向かい合う展示室、それぞれで別々の作家による展示が行われている。

階段を上った先、右側には寺田真由美の作品による「-不在の存在-」と題された展示の会場がある。寺田は練馬区出身の美術作家で、現在はニューヨークを拠点に活動をしている。通常、室内に置かれるようなものたちをモチーフにした作品が配置されている。カーテンのひらめきやバスタブの平面作品、透明の樹脂製衣服、アラバスタの質感をたたえた模型の家具など、どこにでもある、知っている室内の物質たちの質感が変容して目の前に並ぶ空間に立つ体験をすることになる。

寺田真由美 《white chair 150701pa》 ピグメント・プリント、102.0×139.0cm、2015年(無断転載禁止)

廊下を挟んで向かいには若林奮(いさむ)の展示「-Run and Rest-」の会場がある。国内外で評価を得ている芸術家である若林の展示空間の中央には、横須賀美術館の前庭に置かれた巨大な屋外彫刻《Valleys(2nd Stage)》(1989年制作/2006年設置)と同様の、小型サイズのものが設置されている。これはミニチュアではなく、犬のためのものだということだった。横須賀の屋外作品が、人が通ることを考えて作られているように、この作品は犬が通ることを考えて設計され、中には犬が休むことのできる空間も作られているのだという。

若林奮 《Run and Rest》 鉄、168.0×200.0×609.5cm、1996年(撮影=山本糾。無断転載禁止)

壁面に飾られるドローイング類には、鳥や様々(さまざま)な生きものの中で犬のスケッチがいくつ...

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