07-10
桜蔭学園に対し「訴えるなら許可後に」…隣地のタワマン建設許可差し止め却下に専門家は違和感を抱いた
2026-07-13
HaiPress
隣にタワーマンションが建設されたら教育環境が悪化する──。中学受験の「女子御三家」として知られる私立中高一貫校の桜蔭学園(おういんがくえん、東京都文京区)が、都を相手に建設許可の差し止めを求めたところ、東京地裁は訴えを却下した。都心部では相次ぐマンション開発に近隣との摩擦も生じている。「訴えるなら許可後に」という趣旨の今回の判決を、専門家は「実態に即していない」と指摘する。(鈴木里奈)
◆桜蔭側「日が一日中差さなくなって学習環境が悪化する」

タワーマンションの完成イメージ図(桜蔭学園提供)
水道橋駅から歩いて5分ほど。生徒らの通学路となっている急坂を上り切った先に学園がある。校舎のすぐ隣に地上8階建てのマンションが立っている。
計画では、老朽化したこのマンションを取り壊し、新たに20階建て、高さ76メートルのタワマンに建て替える。

地裁が5月に出した判決によると、マンションの管理組合は建設許可を都に申請。学園側は、建て替えにより「日が一日中差さなくなって学習環境が悪化する」などと主張していた。
◆「一度許可が下りたら、取り消すのは容易ではない」
学園によると、生徒数は中高で計1400人。マンションと隣り合う校舎は中学1年~高校1年の教室が入り、学内で利用する生徒が最も多い。校舎の11メートル先に高さ80メートル近いマンションが建つと「一年中真っ暗になり、生徒のプライバシーも危ぶまれる」という。

桜蔭学園のタワーマンション訴訟について解説する東洋大の大澤昭彦教授=東京都千代田区で(川上智世撮影)
判決は、都が許可を出す前の段階であり「重大な損害が生じる恐れがあるとは言えない」と判断。許可された後に取り消し訴訟を提起すれば「容易に救済を受けられる」とした。
要は「許可後に訴えて」という判決に、都市開発に詳しい東洋大の大澤昭彦教授は違和感を抱く。過去のマンション建設を巡る訴訟から「一度許可が下りたら、提訴しても取り消すのは容易ではなく、司法によって救済される例はほとんどない印象だ」と話す。
◆「行政は開発側と住民側の言い分を取り持つ立場」では
学園周辺は文教地区で、建物の高さは46メートル以下に制限されている。上限より30メートルも高いマンションを建てられるのは、敷地内に誰もが自由に出入りできる「公開空地」を設ければ制限が緩和される都の特例を活用したからだ。

隣接地でタワーマンション計画がある桜蔭学園(右側2棟)。木の真後ろが建て替え前のマンション=東京都文京区で(池田まみ撮影)
開発側は建て替え費用を賄うために、できるだけ規模を大きくしたい。そこに経済合理性と周辺環境への影響という公共性とのせめぎ合いが起こる。大澤教授は「1990年代末以降、国や都が規制緩和を進めたことでマンション紛争が生じてきた。桜蔭学園のようなトラブルは今後も起こりうる」と警告する。
その上で、仲介役としての行政の役割を訴える。「行政は開発側と住民側の言い分を取り持つ立場にある。緩和基準を満たしているか機械的に判断するのではなく、双方の意見を聞き、周辺環境にも配慮するようバランスを取った民間開発を促すべきだ」と話す。
◇
桜蔭学園は控訴した。井上瑞穂教頭は「教育環境の悪化が考慮されず、審議に入らなかったことは大変残念だ」と語った。都側は「都の主張が認められ、妥当なものと受け止めている。引き続き適切に対応していく」とした。マンションの管理組合は東京新聞の取材に「回答できない」とした。
◇◇
◆「女子御三家」残る2校にも「再開発の波」
東京都心部では他の学校も再開発の波にさらされて...
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